さわやかにひろびろとした一日が暮れて、
河原は扇状地に黒い風がさまよいはじめる。
周囲の山々が砦のように高くなり、
わずかにあかるい夕空の向こうへ
昼間の隣国が遠のいて行く。

盆地には、うすら寒い
しろい霧がとめどもなく流れて、
竜王や石和などという町が、         
うかび上って寄添いたそうに、
甲府の方へまたたいている。

もっと遠い勝沼や韮崎は
自分で自分を照らしながら、付近の村々を
その明りで元気づけてやらなければなるまい。

こんな夜には葡萄がいよいよ甘くなり、
北方の山奥のさびしい谷間で
まだ埋まっている水晶たちが歌うだろう、
すべてがそれぞれ結ばれ合おうとする
甲斐の国の秋の夜をこめて。

 
        


  
























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