宮澤賢治の「銀河鉄道の夜」から 石と天体の風景をご案内します 黒曜石の地図は持ちましたか? そろそろ天気輪の柱が瞬きます |
ケンタウルス祭り カムパネルラとジョバンニの学校の教師は「銀河のお祭り」と説明している。 トマトがでまわったり、夜になると涼しいというから時期としては春の終わりだろうか。 祭りにはいちいの葉の玉をつるしたり、ひのきの枝に明かりをつけたりするらしい。 子供達は新しい上着を着、青いマグネシウムの花火を燃やし川に烏瓜をながしにいく。 架空の祭りでありおそらく七夕をイメージしたものだろう、というのが定説だが 星めぐりという音葉からか、昔はクリスマスだと思っていた。 いまだに、その思いいれが抜けない不思議な祭り。 |
天気輪の柱 |
花巻などの寺にあった花崗岩の柱(くりぬいて鉄の輪をはめてあり、それを廻して 晴天を祈った)などからの空想と思われる。 イメージとしてはこのページの羽のついた十字架なのだが実物はどうなのだろう? 『そしてジョバンニはすぐ後ろの天気輪の柱がいつかぼんやりとした三角標の形に なってしばらく蛍のようにぺかぺかと消えたりともったりしているのをみました。』 この天気輪の柱から、銀河鉄道の旅が始まる。 |
夜の軽便鉄道 |
天気輪の柱の光の中、ジョバンニが乗った鉄道は黄色い電燈が灯り 車室の中には青い天鳶糸戎(ビロード)をはった腰掛があり、鼠色の ワニスを塗った壁には、真鍮の大きなボタンが二つひかっていた。 すぐ前の席に座っている男の子が、という記述があるので おそらく対面式のボックスシートだろう。 賢治の鉄道好きは有名で後年妹トシをなくしたときもその傷心を慰めるべく 樺太まで鉄道で旅行している。当時、魂は北に向かう、とされていたので それを追っていたのかもしれない。 |
黒曜石の地図 |
カンパネルラが銀河ステーションでもらった、といっていた地図。 丸い板のようになっており、黒曜石でできている。中には白くあらわされた天の川の 左の岸に沿って一条の鉄道線路が南へ南へとたどっており、夜のように真っ黒な盤の 上に一つ一つの停車葉や三角標、泉水や森が青や緑や橙の美しい光で ちりばめられている。手に収まるほどのプラネタリウムを思っていただければ 近いのではないかと思う。りんと澄んだ黒曜石の板はそれだけでも宝物。 |
天の川 |
『だんだん気をつけて見ると、そのきれいな水はガラスよりも水素よりもすきとおって ときどき目の加減かちらちら紫色のこまかな波を立てたり、虹のようにぎらっと 光ったりしながら声もなくどんどんと流れていき、野原にはあっちもこっちも 燐光の三角標がうつくしく立っていたのです』 天の川の描写でこれほど美しいものはないと思う。 この青白く光る銀河の岸には銀色の空の薄がいちめん風にさらさらとゆれうごいて 波を立てているのだという。天堂(テイェンタン)に行く人のみが見ることのできる河。 |
北十字の河原 『ジョバンニは、走ってその渚に行って水に手を浸しました。けれどもそのあやしい銀河 の水は水素よりももっとすきとおっていたのです。それでも確かに流れていたことは 二人の手首の、水に浸ったところが少し水銀色に浮いたように見え、その手首に ぶつかってできた波はうつくしい燐光をあげてちらちらと燃えるようにも見えたのでした』 小学生のとき始めてよんでその描写に目を奪われた箇所。 この描写に魅せられてこの話に興味をもったような気がする。昇仙峡の水晶から零れる水が このイメージ。いつか友人と見てみたい。 |
次のページがうまく表示されない場合は こちらへどうぞ |
引用文献「銀河鉄道の夜」 |